せんせい、教えて。
家に向かう足取りは重く、踵を引きずる音を立てていた


いつもみたいにうまく歩けないのも、さっきからずっと胸がザワついてるのも、せんせいのせいだ


ため息をこぼしていると、いつの間にか自宅のあるマンションにたどり着いていた


マンションの一階の角部屋が私の自宅


「ただいま」


家の中に入っても、返事が返ってくることはない


それはいつものことだ


私の家にいるのはお母さんと私だけで、今お母さんはパートに出ている時間帯だ


お父さんが数年前に蒸発して以来、お母さんはパートに出るようになった


女手一つで私を育てなければならないのだから、仕方ない


兄弟は、今はもう亡くなってるけど、年の離れた姉が一人いた


だから忙しいお母さんを手伝えるのは私だけ


お母さんの負担を減らす為、できるだけの家事はこなしている


早めに学校から帰って、夕食を作る


普段料理をしない私は最初は適当なものしか作れなかったけど、長年続けてきた今では簡単したものだ


今日は夕方に帰ると言っていたから、早く作らないと


大丈夫、今日はちょっと調子が悪かっただけ


せんせいの言葉を気にすることなんてない


せんせいのことは無理矢理頭から振り払って、早速準備をする


エプロンをつけて材料や道具を並べると、すぐさま開始した
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