蒼春
無事に混雑した駅から脱出し、4人で屋台が立ち並ぶ通りを進んでいく。

まず目に入ったのは射的だった。蓮がどうしてもやりたいそうなので、みんなで挑戦することにした。

蓮は昔から射的が得意で、射的屋さんの間ではブラックリストに載っているらしい。

優れた技術は今年も健在なようで、徳島先輩が欲しいと言っていた景品を片っ端から撃ち抜いていく。

「すげえな蓮。」

一ノ瀬先輩からも驚かれている。

「乃蒼ちゃんもやる?」

『はいっ。』

正直、全然得意じゃない…。蓮の見よう見まねで銃を構える。

「こうだよ。」

先輩が後ろから手を添えて打ち方を教えてくれる。

っ先輩、これはバックハグです…。

心臓の音がバレないようにするのが本当に大変だった。

射的で満足した蓮を先頭に歩く。

「めっちゃいい匂いするわー。」

「あそこの焼きそばだろ。」

『ほんとだー。どうする?なんか食べる?』

先輩たちの何気ない会話は、部活帰りのようで、普段と何も変わりない光景になぜか安心していた。

「乃蒼ちゃん、なんか食べたいものある?」

『えっ?あ、ハットグ食べたいですっ。』

『よしっ!食べいこー!』

「乃蒼はほんとに昔から韓国料理好きだよなぁ。」

『そうなの!?じゃあ、今度一緒に学校の近くの韓国料理屋さん行かない?』

『行きたいですっ!』

『よし!約束だよ〜。』

「女子だけで盛り上がんなー。」

「おい蓮、乃蒼ちゃんに嫉妬すんなよ。」

「えー、だって〜。」

こんな感じに食べたり話したりしながら、花火が上がるまでの時間を過ごした。
< 104 / 129 >

この作品をシェア

pagetop