蒼春
蒼生side

今日、急に乃蒼ちゃんがピアスを開けたいと言ってきた。

乃蒼ちゃんのことだから特に心配はしていないが、唯一の心配事としては“俺が開ける”ということだ。

ピアスを開けている人に電話して相談することにした。

「姉ちゃん、今暇?」

『大丈夫だけど、どうした蒼生?』

俺の姉はモデルとして働いていて、雑誌の表紙を何度も飾ることもあるくらい人気だそうだ。

「ピアス開けるのって痛かった?」

『別にそうでもないけど。なに蒼生、開けるつもりなの?』

「いや、そういう訳じゃないよ。」

『そうなのー?開ければいいのに。』

「気が向いたら。」

そう言って自分の部屋に戻る。こういう時には頼りになる姉だ。


何で急にピアスを開けたいと言い出したのかは分からないが、乃蒼ちゃんがしたいというなら大丈夫だろう。

幸いにも、開けるのは一週間後なので俺にも心の準備をする時間がある。


その間に、インターネットでピアスを開けることについてたくさん調べた。

…俺のことならまだしも、乃蒼ちゃんが痛いと感じることは絶対にさせたくない。


時間が過ぎるのは、思ったより早い。

ついに約束の木曜日の放課後がやってきた。

学校帰りに大きなショッピングモールに寄ってピアッサーを買う。

そのついでに開けようということで、フードコートに着いた。

「開けるよ?」

『はい…。』

開ける瞬間に少し顔を歪めたけれど、全然痛くなかったそうだ。

…乃蒼ちゃんが泣かなくてよかった。



この時、ピアスを開けることに集中していたので、誰かに見られていたことに気づくことができなかった。
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