蒼春
乃蒼side

例の先輩にあんなことを言われた帰り、一ノ瀬先輩が先生と話している声が聞こえた。

あの先生っ!私のピアスについて、いろいろ言ってた人だ。

「一ノ瀬くん、耳どうしたのかな?」

「ピアス開けただけですけど。」

えっ!?先輩がピアス…!?

ちょっと柱の影から見てみるとたしかに開いている。

「一ノ瀬くん、ダメじゃないか。ピアスは」

「先生。何がいけないんですか?」

先輩の低い声にびっくりする。

「な、何って…」

「校則で言われてもいないのに何がダメなんでしょうか。」

「それは…」

「はっきりと言えないのに、否定だけはするんですね。」

先輩は少し怒っていた。そのせいか、口数もいつもより多くなったように感じる。

「そんな態度で1年生に絡まない方がいいですよ?」

もしかして私のために…。

唖然とする先生を横目に通り過ぎてく先輩に蓮が話しかける。

「お!蒼生、お前もピアス開けたんだー。」

「うん。」

「乃蒼に開けてもらった感じだな?」

「いや、他の人。」


他の人…?誰なんだろう。

頭の中を“人の彼氏”というさっきの言葉がよぎる。

まさか…ね。


とりあえず、今日は先輩と帰らないことにした。先輩にメッセージを送る。

『今日は楓たちと帰るので一緒に帰れません。すみません。』

「了解です。」

いつも通りのLINEにも違和感を覚えてしまう。



…今日はもう寝よう。
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