蒼春
次の日もその次の日も、例の先輩に呼び出される日々は2週間も続いた。

しかも浴びせられる言葉は、だんだんとエスカレートしていた。

『乃蒼、大丈夫?』

『最近元気ないよね…』

楓や雪ちゃんに心配される。そういえば昨日の部活の時に徳島先輩にも

『乃蒼ちゃん、何かあった?』

と言われた。

いろんな人に迷惑かけちゃってるなぁ…。

毎日のように向けられる心ない言葉やちょっとした暴力は、思ったより私の精神を削っているみたいだ。


そして今日もまた例の先輩に呼ばれる。

『あんたね、自分のやってることわかってる?』

『…』

『はぁ?シカトとかうざ。』

こんなのは、まだ楽な方だ。中学の頃に比べればなんてことない。そう思っていた…。

次の瞬間、急にお腹を蹴られた。

『痛っ!』

立て続けに髪の毛を掴まれ、引っ張られる。

『や、やめてください!』

『うるさい、黙れよ。』

サクッ

……え?

目の前に髪の毛が落ちてくる。

誰の…?

ハッとなって自分の髪の毛を触ると、

『……ない。』

胸のあたりより長かったはずの髪の毛は、肩につくくらいまでしか残っていなかった。

『これでわかった?じゃあまた明日ねー。あんたが学校に来ればの話だけど?』

そう言って屋上を去っていった。


私は何もすることが出来なかった。


その日は早退して、家に帰ってからも自分の部屋に閉じこもった。
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