蒼春
蓮と一緒に家に着くと、乃蒼ちゃんの部屋の前まで行った。

「乃蒼ちゃん、大丈夫?」

『先輩…?なんで来たんですか…。』

「話したくて。」

『今はそんな気分じゃないです…。』

…だよな。それでも話を続けることにした。

「じゃあ聞くだけ聞いて?」

『はい…。』

「実は昔、」

そう言って、俺は過去の記憶を無理矢理呼び起こして話し出した。

昔、親が虐待をするような家庭で育ったこと。

姉が16歳で家を出てからは一人で耐えてきたこと。

誰も助けてくれなくて学校でもいじめを受けたこと。

おかげで毎日が地獄のように辛くてしんどかったこと。

そんな時にある女の子に出会い、人生が変わったこと。

その女の子とは少ししか一緒に遊ぶことは出来なかったけど、別れ際にミサンガをくれたこと。

すると、ドアの向こうで『待って…』という声がして、勢いよくドアが開いた。

『あの男の子、先輩だったんですか…?』

涙が拭いきれてない目で尋ねてくる。

「そうだよ。」

予想外の出来事にびっくりしている乃蒼ちゃんを抱きしめる。

「久しぶり、約束通りまた会えたね。」

そう言って乃蒼ちゃんが泣き止むまでそばにいた。
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