蒼春
『じゃあ、教室戻ろっか?』

楓がそう言うとみんな帰っていく。

『あ、私、トイレ行ってから帰るから先行ってていいよ。』

『…。』

『オッケー、じゃあまたあとでね~。』

杉本さんはなにも言わなかったけど、楓はそう言って帰っていった。

『杉本さんも帰ってていいよ?』

私がそう言うと私の顔を見てから

『…わかった。あと、私のことは雪って呼び捨てでいいよ。』

そう言うと教室に帰っていった。

周りが静かになると、治まっていた気持ち悪さがまたこみ上げてきた。

うぅ、吐きそう…。

なんかフラフラするし、めまいがひどい…。

続くようにして、さっき思い出してしまった記憶がフラッシュバックする。

無意識に呼吸が速くなる。

やばい、もうちょっとでトイレなのに。

壁に手を付きながら少しずつ足を進める。


不意に誰かの足音がした。しかもどんどん近づいている。

…全然教室に帰らないから先生が探しに来た?

あぁ、限界だ。もう体に力が入らない。

ふわっと体が浮く感覚がして、目の前が真っ暗になる。


私の体は冷たい床に崩れ落ちた。

……はずだった。

「どーした?大丈夫?」

突然誰かに体を支えられた。

「俺の声、聞こえてる?」

首を縦に振る。でもどうしよう、全然声が出せない…。

その人はそれを察したのか、私の体をゆっくり壁に寄りかけながらゆっくりと座らせてくれた。

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