婚約者に売られたドン底聖女ですが敵国王子のお飾り側妃はじめました
序章
「兵が戻ってこれない? どういうことだ?」
大国ロンバルの王太子で、この戦の総大将でもあるイリムは苛立ちを隠せない様子で、不愉快な報告をしてきた部下を怒鳴りつけた。
部下である男は平伏し、おそるおそる口を開いた。
「で、ですが……負傷した兵の数が多すぎます。重症の者も多く、殿下の仰る人数にはとても足りず」
「ふざけるな!〈白い声〉の聖女はなにをしてる? 兵の怪我くらい、すぐに治せるだろうが」
イリムがますます激昂するが、部下は戸惑うように視線をさまよわせた。
「聖女様はよくやってくださっていますが……ひとりであの数の兵士を治癒するのは、さすがに」
「今度の聖女もまた無能なのか? 即刻、新しい者と取りかえろ」
「で、ですが殿下。今の聖女様はもう四人目です。聖教会からも、これ以上新しい者を派遣するのは難しいとの回答が……」
イリムの眉はつり上がり、額には青筋が浮いている。彼はちっと吐き捨てるように言う。
「くそっ。聖女も聖教会も、使えない無能ばかりだな」
「お、お言葉ですが……オディーリア様は特別だったのです。彼女ほどの治癒能力の持ち主は国中どこを探しても見つかりません」
大国ロンバルの王太子で、この戦の総大将でもあるイリムは苛立ちを隠せない様子で、不愉快な報告をしてきた部下を怒鳴りつけた。
部下である男は平伏し、おそるおそる口を開いた。
「で、ですが……負傷した兵の数が多すぎます。重症の者も多く、殿下の仰る人数にはとても足りず」
「ふざけるな!〈白い声〉の聖女はなにをしてる? 兵の怪我くらい、すぐに治せるだろうが」
イリムがますます激昂するが、部下は戸惑うように視線をさまよわせた。
「聖女様はよくやってくださっていますが……ひとりであの数の兵士を治癒するのは、さすがに」
「今度の聖女もまた無能なのか? 即刻、新しい者と取りかえろ」
「で、ですが殿下。今の聖女様はもう四人目です。聖教会からも、これ以上新しい者を派遣するのは難しいとの回答が……」
イリムの眉はつり上がり、額には青筋が浮いている。彼はちっと吐き捨てるように言う。
「くそっ。聖女も聖教会も、使えない無能ばかりだな」
「お、お言葉ですが……オディーリア様は特別だったのです。彼女ほどの治癒能力の持ち主は国中どこを探しても見つかりません」
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