婚約者に売られたドン底聖女ですが敵国王子のお飾り側妃はじめました
母親の身分、健康な身体と王となるに足りる知性。これらの条件が揃っているのは第二王子であるクリストフとレナートだけだ。
次期国王はふたりのうちのどちらかだろうと目されている。その事実はレナートも認識してはいるが……。
「俺は生涯、軍人でいるのが性に合ってるように思うんだがなぁ」
彼はあまり王位にこだわりがなかった。ハッシュはそれを歯がゆく思っている。
「クリストフ殿下をどうこう言う気はありませんが、ナルエフのためを思うなら殿下が王になるべきです」
ハッシュが自分を高く買ってくれていることは嬉しく思うのだが、その意見に素直にうなずく気にはどうしてもなれなかった。
「……お前は知っているだろう。俺はなににも執着しない人生を送りたいんだ」
理想や野心は執着に繋がる。レナートはそれがどうしても嫌なのだ。だが、王になるにはそれらが必要であることも知っている。
ハッシュは悔しそうに、唇を噛んだ。
「では、私やマイトにも執着はしていないんですね? もちろん、あの娘にも?」
「……相変わらず、嫌なところをついてくるな。お前は」
レナートの脳裏にオディーリアのはにかむような笑顔が浮かぶ。
次期国王はふたりのうちのどちらかだろうと目されている。その事実はレナートも認識してはいるが……。
「俺は生涯、軍人でいるのが性に合ってるように思うんだがなぁ」
彼はあまり王位にこだわりがなかった。ハッシュはそれを歯がゆく思っている。
「クリストフ殿下をどうこう言う気はありませんが、ナルエフのためを思うなら殿下が王になるべきです」
ハッシュが自分を高く買ってくれていることは嬉しく思うのだが、その意見に素直にうなずく気にはどうしてもなれなかった。
「……お前は知っているだろう。俺はなににも執着しない人生を送りたいんだ」
理想や野心は執着に繋がる。レナートはそれがどうしても嫌なのだ。だが、王になるにはそれらが必要であることも知っている。
ハッシュは悔しそうに、唇を噛んだ。
「では、私やマイトにも執着はしていないんですね? もちろん、あの娘にも?」
「……相変わらず、嫌なところをついてくるな。お前は」
レナートの脳裏にオディーリアのはにかむような笑顔が浮かぶ。