婚約者に売られたドン底聖女ですが敵国王子のお飾り側妃はじめました
「いや、気にするな。話したくないことではない。お前が知りたいなら、なんでも聞いていい」
「知りたい!……です」

 心のままにそう言ってしまってから、オディーリアは自分の発言に驚いた。かつての自分は、こんなふうに誰かの内面に踏み込むことはしなかった。レナートのような、気遣いなんて立派なものではなく、単純に他人に興味がなかったからだ。

 だが、彼のことは知りたいと思う。どんな両親から生まれて、どんなふうに育ってきたのか。今の彼が、どのようにして形作られたのか。すごく興味があった。

 レナートは小さくうなずくと、語り始めた。

「母が死んだのは、ずいぶん昔、俺がまだ子供だった頃だ。まぁ、病気といえば病気……なんだろうな」

 彼が語る生い立ちは、オディーリアの想像とは大きくかけ離れたものだった。
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