婚約者に売られたドン底聖女ですが敵国王子のお飾り側妃はじめました
 むしろ気になるのは……イリムよりよほど頭の回りそうなこの男が、なぜそんな交渉に応じたのかということだった。
 オディーリアの疑問を察したらしい彼が、唇の端だけを持ち上げ薄く笑った。

「あれは面白い男だな。お前の美貌と治癒の力は類まれなものだから、さらに金300デルを払えと言ってきた」

 オディーリアは呆れてしまった。金300デルは大金だが、王太子であるイリムが執着するほどの額ではない。金に困ったことなどないくせに、なぜそんなにセコいのか。

「払ったのですか?」
「払った」

 レナートは小気味よくうなずいた。
 イリムのセコさも理解できないが、彼の考えていることもオディーリアにはさっぱりわからなかった。

「つまり、あいつは王子である自分よりお前のほうが300デル分価値が高いと思ってるわけだ」
「あぁ、なるほど……」
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