婚約者に売られたドン底聖女ですが敵国王子のお飾り側妃はじめました
 オディーリアは理解したが、おそらくイリムはそんなことは考えもしていないだろう。貰えたら儲けもの。そのくらいの浅はかな考えで言い出したことなのだろう。

「勘違いするなよ。だから、お前が欲しくなったというわけじゃない」
「はぁ…では、どういう?」

 レナートはにやりと笑う。

「女ひとり分の価値もない男が敵国の王になるっていうんだ。こちらとしては大歓迎で、邪魔する気なぞまったく起きないね。いますぐにでも即位してもらいたいくらいだ」

 ロンバルの現国王は賢帝だが、もう高齢だ。そのうえ、子宝には恵まれなかった。彼になにかあれば、唯一の息子であるイリムが玉座に座ることになるだろう。
 
「だから、ロンバルの聖女とやらが醜女でもまがい物でも別に構わんと思っていた。だが……」

 レナートは立ちあがりオディーリアの前まで歩み寄ると、彼女の身体を抱き起こした。彼の親指がオディーリアの唇をゆっくりとなぞる。
< 12 / 174 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop