婚約者に売られたドン底聖女ですが敵国王子のお飾り側妃はじめました
 レナートの主張も理解できないわけではない。でも、現実に戦場で役に立っていたという過去があるからこそオディーリアは心苦しくてたまらなかった。
 帰り際、ハッシュがレナートには聞こえないようオディーリアに忠告した。

「病により王位継承が不可能なバハル殿下。レナート殿下を敬愛しているジル殿下。このふたりをのぞいた王子たちは敵です」
「敵対関係にあるの?」

 クリストフ以外は友好的なように見えたのだが、そうでもないのだろうか。

「少なくとも、味方だと断言はできません。決して油断しないでください。あなたの失態はそのままレナート殿下の弱みになることをお忘れなく」
「う、うん」

 ハッシュにはうなずいてみせたが、オディーリアの胸は不安でいっぱいになった。なんの力もない偽物の女神、敵国であるロンバルから来た女、地位も名誉も財産もなにも持ってはいない。そんな自分が彼のそばにいて、本当にいいのだろうか。

(役に立たないどころか、足を引っ張ったらどうしよう)






 











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