婚約者に売られたドン底聖女ですが敵国王子のお飾り側妃はじめました
レナートはニッコリ笑うと、オディーリアの身体を引き寄せそのまま強く抱きしめた。ふわりと
香る彼の匂いに、オディーリアは昨夜の濃密な時間を思い出してしまった。
オディーリアは慌てて強く頭を振った。
(なにを馬鹿なことを考えて……今日は真面目に話を……)
オディーリア
「俺はお前にベタ惚れで、他の女など目に入らないからな」
「私は真剣に話しているのに。もうレナートなんて知りません!」
オディーリアはレナートの腕をほどくと、ひとり先にシーツにくるまった。
(白い声を取り戻すことはできないだろうか)
白い声は必ずレナートの役に立つ。地位も身分もないオディーリアが唯一レナートにあげられるものだ。それに、聖女の力が戻ればアテナの名も真っ赤な嘘ではなくなる。なんに力もないまま女神を騙り続けることは危険な気がする。ハッシュの忠告を思い出す。油断してはならない。他の王子、クリストフに弱みを見せてはいけない。
レナートはオディーリアの横顔を覗きこむ。思いつめた顔をしている彼女に、珍しく強い口調で呼びかける。
「オディーリア。おかしなことは考えるなよ。俺はお前がそばにいてくれれば、他にはなにも望まない。王位もだ」
オディーリアは彼に背を向けたまま返事をした。
「心配しないで。なにかしたくても、私にできることなんてないもの」
口ではそう言ったが、オディーリアはひそかにある決意をしていた。
(白い声を取り戻したい。なんとか方法を考えてみよう)
香る彼の匂いに、オディーリアは昨夜の濃密な時間を思い出してしまった。
オディーリアは慌てて強く頭を振った。
(なにを馬鹿なことを考えて……今日は真面目に話を……)
オディーリア
「俺はお前にベタ惚れで、他の女など目に入らないからな」
「私は真剣に話しているのに。もうレナートなんて知りません!」
オディーリアはレナートの腕をほどくと、ひとり先にシーツにくるまった。
(白い声を取り戻すことはできないだろうか)
白い声は必ずレナートの役に立つ。地位も身分もないオディーリアが唯一レナートにあげられるものだ。それに、聖女の力が戻ればアテナの名も真っ赤な嘘ではなくなる。なんに力もないまま女神を騙り続けることは危険な気がする。ハッシュの忠告を思い出す。油断してはならない。他の王子、クリストフに弱みを見せてはいけない。
レナートはオディーリアの横顔を覗きこむ。思いつめた顔をしている彼女に、珍しく強い口調で呼びかける。
「オディーリア。おかしなことは考えるなよ。俺はお前がそばにいてくれれば、他にはなにも望まない。王位もだ」
オディーリアは彼に背を向けたまま返事をした。
「心配しないで。なにかしたくても、私にできることなんてないもの」
口ではそう言ったが、オディーリアはひそかにある決意をしていた。
(白い声を取り戻したい。なんとか方法を考えてみよう)