婚約者に売られたドン底聖女ですが敵国王子のお飾り側妃はじめました
「そうなのね~。乙女心ね! もちろん私は恋するオデちゃんの味方よ」
「かわいい顔に渋い声ってのも、オデちゃんの魅力だと思うけど……でも歌が好きなら歌えないのはつらいよね」

 結局、ふたりは知り合いのなかでもっとも薬に詳しい人間に会わせてくれると約束してくれた。

「ありがとう!」

 そして約束の日。ふたりは上級貴族の主治医を長年務めてきたという老爺のところへオディーリアを連れてきてくれた。彼はクロエの先生でもあるそうだ。

「クロエお嬢様。お久しぶりですな」
「うん。私ってば健康だけが取り柄だから、なかなか先生に会う機会がないのよね」,
「そうですなぁ。小さい頃からクロエお嬢様は元気いっぱいで。ハッシュ坊ちゃんはお腹が弱くてよく泣いてたものですが……」
「マジ? あのハッシュがお腹が痛くて泣いてたなんて、かわいい時代もあったんだねぇ」

 クロエやハッシュの昔話にはオディーリアも興味があるが、今はそれどころではない。オディーリアは三人の話に割って入った。

「あの、デューモ先生!」
「なにかな、美しいお嬢さん」
「教えて欲しいことがあるんです」
< 131 / 174 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop