婚約者に売られたドン底聖女ですが敵国王子のお飾り側妃はじめました
「と思うがね。魔力でない毒でも、作るときは解毒薬も一緒に作るのが普通だからな」
「そうよね。かけた人間……イリムか」

 イリムに会えれば、白い声を取り戻せるかもしれない。できれば二度と会いたくはない相手だが……レナートのそばにいるために必要なのだから仕方がない。背に腹はかえられない。

 オディーリアはふかふかのベッドにお尻を沈めながら、う~んとうなった。レナートはまだ執務から戻ってきていないのでひとりきりだ。

「問題はどうやったらイリムに会えるか、よね」

 ここは、故国ロンバルからはあまりにも遠い。気軽にひとりでロンバルに帰ることはとてもできない。レナートに言えば、きっと反対されるだろう。かといって、マイトとクロエにこれ以上世話になるわけにもいかない。

「なぜ浮かない顔をしている?愛する夫が帰ってきたというのに」

 集中して考えこんでいたせいで、レナートが部屋の扉を開けた音にオディーリアは気がつかなかった。彼は背中からオディーリアを抱きしめると、うなじにそっとキスを落とした。

「あっ」

レナートは思わず甘い声を漏らしたオディーリアの顎を持ち上げると、正面から口づけをした。角度も変えてキスは何度も繰り返される。性急で、少し強引だった。
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