婚約者に売られたドン底聖女ですが敵国王子のお飾り側妃はじめました
ティラは緑豊かな美しい国だった。ロンバルにもナルエフにもない珍しい花々がオディーリアの目と鼻を楽しませてくれる。爽やかな風が頬を撫で、まるでピクニックにでもきているかのような牧歌的な気持ちになる。長い列を作って進む軍の姿がなければ、ここがこれから戦場になるのだなんて誰も信じないだろう。
「こんなに綺麗な景色なのに」
馬上で揺られながら、オディーリアは思わずつぶやく。言ってしまってから、はっと口をつぐんだ。隣にいるレナートだって、好き好んで他国の領土を荒らそうとしているわけではない。誰よりも戦上手な彼が、戦を心底嫌っていることはよくわかっているつもりだ。
「ごめん」
無神経な発言を詫びるオディーリアに、レナートは気にするなと言うように首を横に振った。
「気にするな。むしろ、正直にそう言ってくれる人間をそばに置いておきたい。俺のしていることは残虐非道な行為だ。それを忘れて麻痺するようじゃ困るしな」
「うん……」
オディーリアは小さくうなずいた。そんなことないと嘘をつくことは彼女にはできなかった。レナートを愛している。将軍の責務を全うする彼を誇らしいとも思う。だが、殺戮は殺戮だ。それはどうしても肯定できない。
「こんなに綺麗な景色なのに」
馬上で揺られながら、オディーリアは思わずつぶやく。言ってしまってから、はっと口をつぐんだ。隣にいるレナートだって、好き好んで他国の領土を荒らそうとしているわけではない。誰よりも戦上手な彼が、戦を心底嫌っていることはよくわかっているつもりだ。
「ごめん」
無神経な発言を詫びるオディーリアに、レナートは気にするなと言うように首を横に振った。
「気にするな。むしろ、正直にそう言ってくれる人間をそばに置いておきたい。俺のしていることは残虐非道な行為だ。それを忘れて麻痺するようじゃ困るしな」
「うん……」
オディーリアは小さくうなずいた。そんなことないと嘘をつくことは彼女にはできなかった。レナートを愛している。将軍の責務を全うする彼を誇らしいとも思う。だが、殺戮は殺戮だ。それはどうしても肯定できない。