婚約者に売られたドン底聖女ですが敵国王子のお飾り側妃はじめました
 難しい顔でうつむいてしまったオディーリアの頭をレナートはポンポンと叩いて、にこりと笑ってみせた。

「俺はお前のそういうところがものすごく好きだ。そのままでいい。ずっとそのままでいろ」
「はい」

 レナートはこうやって簡単に自分の心を軽くしてくれる。自分も同じようにしてあげたいと思うのに、生来から不器用なうえに、これまでろくな人間関係を築いてこなかったオディーリアにはとても難しい。オディーリアは自己嫌悪のため息をもらす。

「私、レナートみたいな人間になりたいです」

 それを聞いたレナートはくしゃりと破顔した。

「俺は自分に似た女など好きにならないぞ。絶対にやめてくれ」
「そうですかね。きっとモテると思うけど」

 もしレナ―トが女性だったら、自分なんかよりずっと魅力的で、さぞかしモテることだろう。

「お前は俺にモテている。それで十分だろう。むしろ他の男に好かれることなど許さないぞ」
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