婚約者に売られたドン底聖女ですが敵国王子のお飾り側妃はじめました
「他の部隊からきた者たちですね」
「なるほどな」

 王子や有力貴族はみな自分の軍を持っている。今回のような大きな戦となると、軍は再編成され、いつもと異なる指揮系統に組みこまれることもよくある。ちょうど今の彼らのように。

「他軍に混ざるのには慣れていないのかも知れないな」
「でしょうね」

 理屈は通っている。しかし、レナートは嫌な胸騒ぎを覚えた。

「ちょっと見てくる」

 短く言い捨てて、レナートは歩き出した。マイトが慌てて後を追ってくる。

「レナート様自ら指示するような重要部隊じゃないですけど~」

 ぎこちない様子の一団を近くで見て、レナートの違和感はますます強まる。

「マイト。ちょっと彼らと同じ動きをしてみてくれ」

 マイトは言われた通りにレナートの前で動いてみせる。そして、「あっ」と声をあげた。彼も気がついたらしい。

「見にきてよかった。俺はすぐに戻るから後は任せた」
「え~っと、彼らはどうしますか?」

 マイトは顎で彼らのほうを示す。

「歓迎のディナーでもふるまってやれ」

 最後まで言わずともわかるだろう。そんな表情でレナートはマイトに背を向けた。

「は~い、了解」

 
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