婚約者に売られたドン底聖女ですが敵国王子のお飾り側妃はじめました
「あの、何度もお伝えしていますが、私はもう〈白い声〉を失ってしまいました。治癒の力はゼロです。連れていく価値などないので、殺すか、そこらへんに捨て置くか……」
「治癒の力など要らん。そんなものに頼るような軟弱な兵は俺の配下にはいない」
「では、なんのために?」
「お前の身体には価値がある。大体、俺が買ったのだから俺の好きにさせろ」
「兵の慰み者に……ということでしょうか」

 戦場にはそういう女も必要だ。敵国の捕虜になった以上、仕方のないことかもしれない。オディーリアは自身の運命を受け入れようとしたが、レナートは呆れた顔でオディーリアを見た。

「お前……不幸な人生歩んできただろ?」
「はい?」
「発想がネガティブ過ぎる。買った女の価値をみすみす下げるようなことを誰がするか。もっと有効利用するさ」
「有効利用……とは……」

 〈白い声〉を失った自分に、どんな利用価値があるのだろうか。悲しいことに、オディーリアにはさっぱりわからなかった。
< 15 / 174 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop