婚約者に売られたドン底聖女ですが敵国王子のお飾り側妃はじめました
「お前を疑うつもりはなかったはずなんだが……それでもさっきは少し焦った」
彼らしからぬ拗ねたような口調がかわいくて、オディーリアはクスクスと笑い声をあげた。レナートの手の上に自分の手をそっと重ねる。
「私がイリムを助けたがっていると思いましたか?」
いたずらっぽい瞳でオディーリアが振り返ると、レナートはますますむくれた。
「俺はお前とあいつの過去はよく知らないからな」
元婚約者としての情があるのではと、レナートは誤解したようだ。
「う~ん。イリムとのことは……」
オディーリアはそこで言葉を止め、考える素振りをした。それを見たレナートはゆるゆると首を横に振った。
「いや、いい。話したくないことを無理やり聞き出したいわけじゃない」
オディーリアはぷっと小さく噴きだした。
「そうじゃないです。語るほどの思い出も気持ちも、な~んにもないなぁって」
じっくり考えてみても、レナートに話せるようなことはなにも思いつかなかった。オディーリアはレナートに向き直ると、その温かい胸のなかに飛び込んだ。
彼らしからぬ拗ねたような口調がかわいくて、オディーリアはクスクスと笑い声をあげた。レナートの手の上に自分の手をそっと重ねる。
「私がイリムを助けたがっていると思いましたか?」
いたずらっぽい瞳でオディーリアが振り返ると、レナートはますますむくれた。
「俺はお前とあいつの過去はよく知らないからな」
元婚約者としての情があるのではと、レナートは誤解したようだ。
「う~ん。イリムとのことは……」
オディーリアはそこで言葉を止め、考える素振りをした。それを見たレナートはゆるゆると首を横に振った。
「いや、いい。話したくないことを無理やり聞き出したいわけじゃない」
オディーリアはぷっと小さく噴きだした。
「そうじゃないです。語るほどの思い出も気持ちも、な~んにもないなぁって」
じっくり考えてみても、レナートに話せるようなことはなにも思いつかなかった。オディーリアはレナートに向き直ると、その温かい胸のなかに飛び込んだ。