婚約者に売られたドン底聖女ですが敵国王子のお飾り側妃はじめました
「あのね、治癒能力はレナートが必要ないと言うならもう使わない。約束する。ただ……」
「ただ?」
レナートはぐっと顔を近づけ、オディーリアの言葉を待つ。
「レナートに私の歌を聴いてほしかったの。歌だけはちょっと自信があるから」
「歌以外もお前はすべてがいいぞ」
直球すぎる誉め言葉にオディーリアは頬を染めた。そんな彼女をレナートは愛おしげに見つめ微笑んだ。
「わかった。じゃあ聴かせてくれ」
薄墨の夜空に溶けていくような滑らかな声で、オディーリアは歌う。生まれて初めて愛した人、そして生まれて初めて愛してくれた人への思いをこめて。レナートは目を閉じ、その極上の歌声に耳を傾けた。
「ね、なにか聞こえない?」
「音楽? ううん、歌だわ。なんて美しいのかしら」
女神の歌声は風に乗り、はるか遠くの地までキラキラと輝く光となって降り注ぐ。そして、この夜は多くの傷ついた人々に信じられないような奇跡が起きたのだった。
了
「ただ?」
レナートはぐっと顔を近づけ、オディーリアの言葉を待つ。
「レナートに私の歌を聴いてほしかったの。歌だけはちょっと自信があるから」
「歌以外もお前はすべてがいいぞ」
直球すぎる誉め言葉にオディーリアは頬を染めた。そんな彼女をレナートは愛おしげに見つめ微笑んだ。
「わかった。じゃあ聴かせてくれ」
薄墨の夜空に溶けていくような滑らかな声で、オディーリアは歌う。生まれて初めて愛した人、そして生まれて初めて愛してくれた人への思いをこめて。レナートは目を閉じ、その極上の歌声に耳を傾けた。
「ね、なにか聞こえない?」
「音楽? ううん、歌だわ。なんて美しいのかしら」
女神の歌声は風に乗り、はるか遠くの地までキラキラと輝く光となって降り注ぐ。そして、この夜は多くの傷ついた人々に信じられないような奇跡が起きたのだった。
了