婚約者に売られたドン底聖女ですが敵国王子のお飾り側妃はじめました
一章 裏切り
果てなく続く赤土の荒野に、乾いた風が吹きすさぶ。風は戦場の匂いを運んでくる。据えた血肉の……死の匂いだ。そのおぞましさに、オディーリアはぶるりと身体を震わせた
漆黒の闇に向かって、彼女は歌う。祈りの歌だ。穢れを洗い流すような清らかな声が夜空に溶けていく。
オディーリアは南の大国ロンバルに生を受けた。傷ついた人々を癒やす〈白い声〉を持つ聖女だ。月光のように優しい銀の髪と神秘的な輝きを放つ紫の瞳。象牙のようにすべらかな肌に薔薇色の頬と唇。ロンバルの真珠とうたわれる美貌の持ち主でもある。
なぜ、彼女がその可憐な身に似つかわしくない戦場の宿営地にいるのかというと、婚約者であるロンバルの王太子イリムに連れてこられたからであった。
(イリムは無事なのかしら。なんとなく……嫌な予感がする)
この戦は負け戦になる。オディーリアにはそんな予感があった。
漆黒の闇に向かって、彼女は歌う。祈りの歌だ。穢れを洗い流すような清らかな声が夜空に溶けていく。
オディーリアは南の大国ロンバルに生を受けた。傷ついた人々を癒やす〈白い声〉を持つ聖女だ。月光のように優しい銀の髪と神秘的な輝きを放つ紫の瞳。象牙のようにすべらかな肌に薔薇色の頬と唇。ロンバルの真珠とうたわれる美貌の持ち主でもある。
なぜ、彼女がその可憐な身に似つかわしくない戦場の宿営地にいるのかというと、婚約者であるロンバルの王太子イリムに連れてこられたからであった。
(イリムは無事なのかしら。なんとなく……嫌な予感がする)
この戦は負け戦になる。オディーリアにはそんな予感があった。