婚約者に売られたドン底聖女ですが敵国王子のお飾り側妃はじめました
 あれは譲り受けたなんていう友好的なものではなく、単なる捕虜交換だろうとオディーリアは思ったが口には出さなかった。
 そんなことより、ハッシュと呼ばれたこの男からの敵意をひしひしと感じ、居心地が悪いなんてもんじゃなかった。

「まぁ、側室のひとりとしては別に構いやしませんがね」

 正室としては絶対に認めないという彼の心の声が、オディーリアには聞こえた気がした。

(別に正室にも側室にもなる気はないし、認めてもらわなくて構わないけど……それより……)

「あの、殿下とは?」

 将軍の敬称なら閣下じゃないのだろうか。これも文化の違いだろうか。
 オディーリアの疑問に、マイトがあぁ!と手を打った。

「一緒にいた軍のみんなはレナート様を将軍と呼ぶもんね! でも、レナート様はナルエフの王子だから殿下も間違いじゃないよ」
「王子……さま……?」
「驚いたか?」
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