婚約者に売られたドン底聖女ですが敵国王子のお飾り側妃はじめました
 男は、地面に倒れこみ意識を失いかけていたオディーリアの髪を乱暴につかむと無理やり顔をあげさせた。

「とはいえ、ナルエフに〈白い声〉は渡せないしな」

 そうつぶやくと、オディーリアの口に小瓶を押しつけ中身の液体を無理やり流し込んだ。ごくりとそれが喉を通った瞬間、焼けつくような痛みがオディーリアを襲った。強烈な熱さと地獄のような痛みで喉が潰されていく。

 薄れていく意識のなかで、オディーリアは必死に歌った。自分のために歌を捧げるのは、オディーリアの人生で初めてのことだった。
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