婚約者に売られたドン底聖女ですが敵国王子のお飾り側妃はじめました
「これは、詐欺……と言いませんか」

 夜、本陣の天幕に戻ってきたレナートにオディーリアは詰め寄った。
 彼はくすくすと楽しげに笑っている。

「どこがだ? 女神の微笑みには、とびきりの力があると言っただけだ。力とはなにか、と明言はしていないぞ」
「ですが……」
「そもそも、あくまでも噂だ。戦場では真偽のわからぬ噂がいくつも流れる。これもそのうちのひとつ。信じるも信じないも本人次第だ」

 オディーリアは呆れた。

「その言い草が詐欺師そのものです! 大体、私は天から舞い降りてなどいませんし。あなたに買われただけです」
「それじゃあ、夢がないだろう」

 レナートはオディーリアの腕を引き、自分の寝台にひきずりこんだ。彼の重みで、オディーリアは身動きを封じられてしまった。
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