婚約者に売られたドン底聖女ですが敵国王子のお飾り側妃はじめました
 レナートが難しいことを言うからじゃないか。オディーリアはそう目で訴えた。レナートは、ははっと白い歯を見せて笑う。

「女神様は負傷している兵しか癒やしてくれないのか?」

 オディーリアが答えるより先に、彼は彼女の柔らかな頬に唇を寄せた。そのまま耳を軽く食み、首筋に舌を這わせる。

「んんっ」

 オディーリアの唇から艶めかしい吐息がこぼれる。レナートは嬉しそうに微笑むと、まるで猫にでもするように彼女の喉をくすぐった。

「ほら、俺にも微笑みかけてくれ。それだけで、明日も戦えるから」
「ですから、笑えと言われて笑うのは難しいのです」
「そうか? なら、こっちで我慢しよう」

 レナートはオディーリアの唇に、噛みつくようなキスをした。
 彼のキスは乱暴なようでいて、甘く優しい。彼にキスをされることが、いつの間にか当たり前になっている。その事実に、オディーリアは戸惑っていた。
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