婚約者に売られたドン底聖女ですが敵国王子のお飾り側妃はじめました
「はい、おしまいです。傷のせいで今夜は熱が出るかもしれませんので、絶対に無理はしないでくださいね」

 面差しにまだあどけなさを残す年若い兵に向かって、オディーリアはにこりと微笑んだ。

「あ、ありがとうございます! 女神様に手当てしてもらえるなんて……もう死んでもいいですっ」
「そ、それはダメです。早く元気になって、たくさん手柄をたててください」
「が、頑張ります!!」
「はい、頑張ってください」

 ここにきてから、もう結構な時が流れていた。前線を少しずつ移動させながら、戦は続いている。
 オディーリアは女神様という呼び名にもすっかり慣れ、〈白い声〉を使えないなりに、精一杯の看護を続けていた。
< 73 / 174 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop