婚約者に売られたドン底聖女ですが敵国王子のお飾り側妃はじめました
「うん、このくらいの傷は問題なし。今すぐ前線に戻れるわよ!」
「えぇ~結構痛いし、少し休ませて……」
「レナート将軍の元で戦いたいなら、そんな軟弱なこと言ってちゃだめ。さ、気合い入れて戻ろ~!」

 クロエも慣れた様子で、疲れた兵を叱咤激励している。
 
「女神様、女神様!」
「はい、なんでしょう」

 オディーリアを呼んだのは、彼女と同じ年頃の大柄な男だ。彼は肩にかなり酷い傷をおっていたのだが、ずいぶんと回復した様子だった。

「肩はもう大丈夫ですか?」
「女神様のおかげでこの通りです!」

 オディーリアが聞くと、彼は腕をぶんぶんと振り回して回復をアピールする。

「よかった」

 オディーリアはふふっと微笑んだ。すると、男はその大きな身体に似合わず、ぽっと頬を染めた。

「明日から戦場に復帰します。め、女神様のためにっ、戦ってきます!」
「はい。ご武運を祈っています」
「うぅ……し、死んでもいい!」

(なんで、みんなして死にたがるのかしら)
< 74 / 174 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop