ここは会社なので求愛禁止です! 素直になれないアラサー女子は年下男子にトロトロに溺愛されてます。
 松田はほぼ独り立ちし、一緒に行動する事が少なくなった。午後の業務も別々だったので松田と顔を合わす事が意外と少なかった。

「寂しいな……」

 休憩室で一人コーヒーを飲む。無駄に静かな空間。松田の顔が見れない寂しさが急に込み上げてくる。

「なんで寂しいんですか?」

 後ろから松田の声が聞こえ持っていた砂糖とミルクがたっぷりの激甘コーヒーを落としそうになった。

「うわっ、松田君!?」

「俺に会えなくて寂しかった?」

「なっ……違うわよっ」

「ふーん、じゃあいいです」

 ツンとそっぽを向いて会議室の方へ松田は歩いて行ってしまった。

「……やっちゃったかな」

 
 グッと激甘コーヒーを飲み干し仕事にもどる。

(……素直に寂しかったって次は言おう)

 仕事が終わったのは夜の十九時。デスクを見るとまだ松田の鞄が残っていた。

(まだ松田君居るのね……待ってみよう)

 松田と一緒に帰る為に自分の椅子に座り松田を待つ。
 つい最近の自分からは想像もできない。彼氏の仕事を待つ自分……
 何とも幸福な温かい浮遊間に包まれている気がした。
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