ここは会社なので求愛禁止です! 素直になれないアラサー女子は年下男子にトロトロに溺愛されてます。
「そんなに喉渇いてたんだ」

「はは、寝起きだからかなぁ」

 よかった。緊張しているとはバレていないみたいだ。
 昼間の決意を実行する時がきた。
 グッと一息飲み思った事を言葉にする。

「……松田君と一緒に帰ろうと思って待ってたら寝ちゃってたみたい」

 顔を見る事は出来なかったがちゃんと言えた、と達成感。チラッと松田の方を見ようとした瞬間あっという間に松田の腕の中。ギュッと強く抱きしめられて少し苦しいくらいだ。これでは松田が今どんな顔をしているのか見れない。

「松田君っ、苦しいよ」

「あ〜ごめんなさい、今嬉しすぎて顔がゆるゆるだと思うんで見ちゃ駄目」

 そう言われると見たくなるのが人間の衝動。身体を揺さぶってみるが松田はビクともしない。

「駄目だって言ってるのに」

「え?……んッ……」

 一瞬見えた松田の顔は真っ赤に染まっていた気がしたが、それを気にしてられないくらいに熱く濃厚なキス。
 二人の息遣いだけが部屋に響きなんだかただの休憩室が凄くいやらしく感じてしまった。

「水野さん顔真っ赤」

「んなっ! 松田君のせいだからね! もう、帰るわよ!」

「ははは、帰りましょう」

 二人並んで会社を出る。
 松田に手を繋ごうとお願いされたがまだ会社の近く、誰かに見られたら大変だ。手を繋ぎたい……そう思ったが「会社が近いから駄目!」と断ってしまった。
 ショボンと肩を落とす松田が無性に愛おしく思えた。
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