ここは会社なので求愛禁止です! 素直になれないアラサー女子は年下男子にトロトロに溺愛されてます。
 一番下っ端なので一番最初に出社し会社内を綺麗にする。会社内といっても自分の部署の部屋だけだ。このお陰でいつも早めに出社してくる彼女との二人きりの時間が十分弱くらい出来る。

 ガチャッとドアが開く音がしたのでバッとドアの方を向くとやはり彼女が一番に出社してきた。

「おはようございます、水野さん」

「あ、おはよう松田君」

 今日も可愛い俺の彼女。
会社では付き合っている事は内緒だ。
 ただ彼女の仲の良い同期の櫻井涼子さんと橅木圭佑さんだけは知っている。
 多分男の勘だが橅木さんは彼女の事が好きなんだと思っているので正直仲良くしている二人を見るとどうしてもヤキモチを妬いてしまう。
 あの時だってそうだった。
 泣かしたのは俺のせいだが泣いている彼女を一番最初に抱きしめて安心させてやりたかった。
 俺が好きなのは水野さんだけです、って。
 なのに橅木さんに先越され圧に押されて暫く動けなかった自分が情けない。
 橅木さんに抱きしめられている彼女を見て悔しくて人の目も気にせずに泣いてしまいそうなのをグッと拳を握りしめて耐えた。
 すぐにあの後二人を追いかけたが見事に電車に乗り遅れてしまい次の電車に乗り、彼女の駅に降りて全力疾走で走った。もうあれ以上の速さで走れる事はないだろうな……
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