ここは会社なので求愛禁止です! 素直になれないアラサー女子は年下男子にトロトロに溺愛されてます。
 隣のデスクでは松田もメールチェックを済ませたところだろうか、グッと背を伸ばし眼鏡を掛け直す仕草にドキッとしてしまった。

「水野さん、あとで資料の確認お願いしていいですか?」

「勿論、あと少しで時間できるからちょっと待ってもらえる?」

「分かりました」

 あと少しで終わりそうなところで視線を感じる。
 もちろんその視線の持ち主は松田だ。

「あの……松田君、もう少しで終わるから」

「はい、分かってますよ」

 ジッと見つめるのをやめない松田に誰かが変に思うんじゃないかとヒヤヒヤする。

「松田〜、それはバレバレよ? 顔に出ちゃってる」

 ナイス涼子! と拍手を称えたい気持ちになる。

「俺が一方的に水野さんを好きって思われる分には全然いいんですよ」

「男気あるね〜! 若いって凄い!」

「いや、涼子……親父みたいになってるから」

「水野さん、大好きです」

「ちょ! やめなさい! ほら、もう終わったから資料の確認するわよ!」

 その場にいるのが恥ずかしくて、ガタッと立ち上がり「来なさい!」と松田を資料室に連れて来た。
 棚にビッシリと紙の資料がファイルに挟まれて並ぶ資料室は電気をつけていても少し薄暗い。
 今は殆ど使う人も少なく、いずれかは全てデータ化し、この資料室はなくなると言う噂を聞いた事がある。
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