ここは会社なので求愛禁止です! 素直になれないアラサー女子は年下男子にトロトロに溺愛されてます。
 テーブルの上でブーブーっとスマホのバイブ音が鳴り、手に取ると松田からの電話だった。

「もしもし?」

「あ、今電話大丈夫ですか?」

「ええ、もうあとは寝るだけだし、どうしたの?」

 松田の電話越しに甲高い声が聞こえてくる。この声の持ち主は分かりきっている、誠だろう。
 モヤモヤする。また一滴黒い何かが溜まる。

「さっき話してたレストランなんですけど、誠が凄くいい場所知ってて、そこにしようと思うんですけど、フレンチでいいですか?」

「……誠さんそこにいるの?」

「え、あぁ居ます、また泊まらせろって急に来ましたよ」

「そう……私フレンチ好きだから、松田君がいいと思う場所でいいわ、じゃあまた明日」

 一方的に電話を切った。切り際に松田が何か言ってたような気がしたが、あれ以上電話を続けていたら多分余計な事を口走ってしまったかもしれない。

 ――またマコトと二人で一緒にいるの?
 ――なんでマコトが選んだ店にするの?

 家族同然に大切にしている人に対してそんな、嫉妬じみた事を言ってしまったら確実に重い女だと思われて、嫌われてしまうかもしれない。
 私がグッと我慢……すればいいだけの話だ。
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