ここは会社なので求愛禁止です! 素直になれないアラサー女子は年下男子にトロトロに溺愛されてます。
「あ、誠さん、こんばんは」

「こんばんは〜」

「松田君ならまだ会社よ、残業だって言ってたわ」

「あ〜、今日は大雅じゃなくて真紀さんに用があって、寒いし近くのカフェにでも入りません?」

 私に用があるなんて言われてしまったらついて行くしかない。誠の後ろをついて行き会社近くのカフェに入った。
 店内は暖房が効いていて、冷えた身体を暖めた。
 誠と向かい合わせに座り、誠はホットコーヒー、私はホットミルクティーを頼んだ。

「仕事終わりにごめんね〜、急で驚かしちゃったよね」

「大丈夫よ、で、どうしたの?」

 この場を一刻も早く立ち去りたくて自分から話を持ち出した。
 誠の口からは予想もしなかった言葉が出てきた。

「単当直中に言うけど、大雅と別れてくれない?」

 いつもの可愛い声とは真逆の低くて太い声。
 誠の雰囲気から冗談で言っていないと言うことは分かる。さっきまでのフワフワした感じとは真逆のジッと私を見る真剣な顔つきとピンと伸びた背筋が本気で言っている事を嫌でも分からせる。
 それでも何を言っているのか理解出来なかった。
 
「……どうして?」

「真紀さんと出会ったせいで大雅は凄く変わった。それがどうしても許せない、小さい人間だって思われたって構わない、だって子供の頃からずっと一緒にいて、ずっと好きなんだから……ずっと私が大雅を守ってきた。私にとって大雅は一番だし、大雅にとってもずっと私が一番だったのに……ポッと出てきた真紀さんに大雅を取られた私の気持ちがわかる?」

 ポッと出……あぁ、やっぱり誠は松田のことが恋愛対象で好きなんだ、と確信が持てた。
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