ここは会社なので求愛禁止です! 素直になれないアラサー女子は年下男子にトロトロに溺愛されてます。
 産まれてすぐに施設に入った俺は親の顔なんて知らない。誰に産んでもらったのか、誰と誰との子供なのかなんて全く分からず、施設にいる事が普通、そう思っていた。
 子供ながらに親がいない事を理解していたのか全く寂しいという感情は湧き出てこなかった。
 むしろ寂しいって何? 美味いの? レベルだったと思う。
 施設には色んな子供達がいて俺と同じように親に捨てられた子もいれば、不慮の事故で両親を亡くしてしまった子もいた。
 大体そのような理由がある子達はこの施設に入るときは大泣きをし「お家に帰りたい! 嫌だ!」とか言って泣き喚いている子が殆どだった。
 俺はそんな子を見ても何とも思わなかった。なにこいつ泣いてんだ? としか思わなかった。
 今思えばかなり感情的な物がかなり欠けていたんだと思う。
 そんな中で誠がこの施設に入ってきた。
 俺と同じで親に捨てられたらしい。物心もついている十歳、親に捨てられたという事実が受け入れられないのか誠は荒れ狂うように泣き叫び、帰らせろ! ママに会わせろ! と泣き狂っていた。
 そんな誠を見ても俺はうるせぇな……としか思えなかった。
 たまたま俺と誠は同い年だったので寝る部屋を一緒にされた。正直だりぃ、としか思えなかった。

「……松田大雅、よろしくな」

「……グスッ、清水誠」
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