ここは会社なので求愛禁止です! 素直になれないアラサー女子は年下男子にトロトロに溺愛されてます。
 電車内は夜遅い事もあって空いていた。
それでも座らず、手を離さず、お互い無言で電車に揺られた。

「……じゃあ着いたから、また明日」

「ここまで来たんで家まで送りますよ」

「家!? いいわよ! 言っとくけど入れないわよ!」

「んな事分かってますよ、酔ってる水野さんを放っておく訳にはいかないですからね」

「よ、酔ってないわよ!」

「はいはい、家まで案内してくださいね」

 あーだこーだ言い合いながら
結局松田に押し切られて家まで送ってもらってしまった。

「家着いたから……わざわざ送ってもらってありがとう」

「女の人に一人で帰らせる方があり得ないですよ」

「本当に口が上手いわよね、じゃあまた明日……手を離して下さい」

「あ、すっかり忘れてました、後、一個忘れ物がありました」

「ん? ……んんっ!!」

 やられた。
 私はやはり隙だらけなのだろうか。
一瞬でまだ松田に唇を奪われた。
 けれど私は自然と松田の唇を受け入れていた。
 お互いにお酒が入っているからかこの前よりも唇も舌も息も熱い。
 松田の息をする声が間近でよく聞こえる。
その声がとてつもなく色っぽくてドクンと心臓が跳ねた。
 どんどん熱くなる身体と比例して頭もクラクラしてきた。
< 35 / 232 >

この作品をシェア

pagetop