ここは会社なので求愛禁止です! 素直になれないアラサー女子は年下男子にトロトロに溺愛されてます。
 ボソッと耳元で囁かれゾクゾクと背筋が震える。
 ニヤニヤ笑いながら「残念」と松田は自分のデスクに戻った。
 でもまあ、コーヒーくらいはご馳走しようか……
 休憩時間に自動販売機に向かいブラックコーヒーを一本購入し、部署に戻る。
 自分はブラックコーヒーは飲めない。苦すぎる。
松田のためにブラックコーヒーを買った。確かいつも飲んでいるのはブラックだったような気がする、曖昧な記憶だが……

「松田君、さっきのお礼にどうぞ」

 スッと松田の目の前に缶コーヒーを置く。

「俺がブラック飲んでるの知っててくれたんですね、嬉しいな」

「なっ、たまたまよ! さぁ残りの仕事もさっさと終わらしちゃいましょう!」

「はい」

 松田の喜んだ顔が頭から離れない。
コーヒーをあげただけなのに、あのクシャッとした笑顔がとても可愛い……そう思ってしまった。
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