強面お巡りさんはギャルを愛しすぎている
朝から色情めいていたが、リビングの掛け時計を見てハッとする。いつもの起床時間よりも寝坊したのだからぼんやりとしていられない。急いで洗濯機を回し、キッチンに戻る。
修一郎さんは私の分も考えてコーヒーを淹れてくれていて、コーヒーサーバーの残りをお気に入りの黄色のシンプルなマグカップに注いだ。このマグカップは付き合い始めてすぐに彼が私にプレゼントしてくれた大切な物だ。
有難みながらまだ温かいコーヒーを一口飲んだ。ホッと焦っていた気持ちが落ち着いていく。
マグカップを持って寝室へ移動し、鏡台に座りメイクを始めた。
「写真か……」
考えながらでもメイクの手順は体に染み込んでいて手が勝手に動いている。
朝から嬉しいことと嫌なことが舞い込んできた。
私は結婚式は挙げたくなかった。式を挙げようが挙げまいが、私たちが幸せならそれでいいのではないだろうか。修一郎さんも特に結婚式にこだわりを持っているようではなかった。
しかしそうは問屋が卸さなくて、入籍後修一郎さんのご両親から式を楽しみにしてると言われてしまった。
「どうするの菜摘。考えるのよ」
鏡に映る虚な目をした自分に問いかけるも、もちろん何の返事もない。このまま結婚式の準備を進めたらいずれバレてしまう。
三十二ミリのコテでミックスにワンカールだけ髪を巻いているとスマホの通知音が鳴った。スマホを覗き込むと顔認証ですんなりロックが解除され、通信チャットアプリが起動した。