強面お巡りさんはギャルを愛しすぎている

 ここまでくればお気づきの方もいるとは思いますが、私……小鳥遊菜摘は元ギャルだ。しかも渋谷一のガングロギャル。これが私の墓場まで持っていかなければならない秘密だ。
 ギャルだった人はいくらでもいるし、大した秘密じゃないかもしれない。だけど、私にとっては大問題なのだ。

 修一郎さんは”ギャル嫌い”だからだ。

 連絡の送り主はギャル時代の旧友まりりんからで、保冷剤を首に当てながら鏡台に戻ると追撃が来ていた。

"ナょちゅレよはぅちらσのカレ)スマナニ"U☆"

 「誰がカリスマだー!!」

 私はもうギャルは辞めた。辞めてこの幸せを掴んだんだ。もうギャルには戻らない。そう思うのとは裏腹に、辞めた今でも連絡をくれ祝ってくるのが少し嬉しかった。

 ピーピーと洗濯機が止まる音が微かに聞こえた。時間を見たらもう少しで家を出なければいけない。
 まりりんへの返事を後回しにし、超特急で家事をこなした。
 こんな格好悪い姿、修一郎さんには見られたくない。
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