強面お巡りさんはギャルを愛しすぎている
「えー、みなさんに今日は朗報があります!」
都内の桜も咲き始め、会社の入口の植え込みにある桜の木もそろそろ見頃を迎えたある日。
朝礼で各企画担当責任者から進捗報告と今日のスケジュール予定を話し終えた後、部長の榊さんが満面の笑みでみんなの注目を集め始めた。その一声にフロア中がざわめきだった。朗報と聞いて期末賞与でも出るのかと目を爛々とさせ期待している者もいて静かに一人冷笑する。
「高橋さん、前に」
「はい」
名前を呼ばれ、お気に入りのオープントゥパンプスのヒールを鳴らしながら前に出た。背筋を伸ばし、朝セットしてきたゆるふわの髪を靡かせ颯爽と歩く私にみんなの視線は釘付けだ。
榊さんは私が横に立ったのを確認すると、一つ咳払いをした。
「えー、朗報と言いましたが……ショック受ける奴が大勢いいると思います。高橋さんがご結婚されました」
榊さんから説明されにっこり微笑むと、“ うぉおおおお”とデスクに項垂れる男性陣の野太い断末魔と、祝福する女性陣の甲高い声がないまぜになりフロアに響いた。