強面お巡りさんはギャルを愛しすぎている

「朝会あるの?」
「はい。なんだか急遽入ったみたいで……でも資料見るからに面白そうな企画ですよ!」

 木下ちゃんは綴じた資料を一部差し出してきた。

「女子高生制服のPR?」

 私はイベント会社"Y企画"でディレクター業務をしている。Y企画は、企業の売り出したい商品の販促や新規顧客獲得のための企業PRなどさまざまなイベントの企画・制作・運営をしている。
 顧客からの要望と予算をすり合わせてイベント内容を企画し、会場手配やスケジュール管理、ブースデザイナーや設営会社への発注。当日現場の進行、スタッフ管理などがあり、イベント終了後は撤収作業までこなす、わりと体力勝負な仕事だ。
 イベント当日が近くなってくると残業続きで大忙し。だけど多種多様な業種とやりとりができて自分の視野や知識も深まるし、実際とても楽しい。
 イベントが大成功して先方の売り上げが伸びるとやりがいを感じる。ーーーーが、女子高生向けの制服のPRイベントは初めてだ。
 それどころか私は高校生時代ガングロギャルだったうえにギャルであったことを隠している。自分にとっては少々気まずい企画だ。
 自分が担当にならないことを祈り、木下ちゃんに資料を返したが彼女はキョトンと目を丸くして資料を受け取らない。

「それ、小鳥遊先輩の分です」
「え」
「ここ見てください。担当に小鳥遊先輩の名前が」

 綺麗な桜色のジェルネイルが示す所を見るとハッキリと担当者欄に他の人の名前に並び旧姓で高橋菜摘と書かれていた。

 (なんで私が?!)

 今朝のまりりんといい、今日は女子高生ネタが尽きない。
 内心叫び狂う私を押さ込みながら「ありがとう」とそのまま一部受け取り平然を装った。

「朝会始めまーす」

 上司の榊さんの声がフロアに響き、私は重い足取りで会議室へ入った。

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