強面お巡りさんはギャルを愛しすぎている
「えー配った資料の通り、急遽ゴールデンウィーク初日に女子高校生の制服を取り扱う"West boy"さんからの依頼で渋谷で販促イベントを行うことになりました!」
榊さんの説明を聞きながら資料に目を通した。
ニュースでもやっていたが、近年制服の自由化が進んでいる。私立とは違い、公立高校では制服を廃止していく学校が増えていた。
今回依頼をしてきた会社は時代やニーズに応えた制服作りを行なっていて、少しでもブランド名を若い世代に知ってもらいたいとのことだった。
たしかに昔、なんちゃって制服が流行った。私も通っていた学校の制服が昭和の女学校を醸し出すほどダサかったから放課後に渋谷駅のトイレで着替えていた。当時はやっていたスモーキーピンクのオーバーサイズのカーディガンとルーズソックス、ローファーは踵を踏んでいた。
(肌も日サロで焼いてたし、唇も白くしてたなー)
自分の黒歴史を思い出すだけで恥ずかしくなり、机の下で踵を上げたり下げたりと落ち着かなかった。
(たしかあの時の制服ってまだ実家にあったっけ……)
「えー、皆さんのスケジュールを確認したところ、羽鳥君と高橋さんが空いてそうだったので、この企画をお願いしたいと思います」
「俺は大丈夫ですよ」
プロデュサーの肩書きを持つ羽鳥さんが答えると私の返事待ちとなり、みんなからの視線が集まる。スケジュール的に今抱えている企画が終わったら手が空くが、この企画はどうもやる気にはなれない。
しかし、今会社は人手不足。みんな残業続きで、やりたくないとはとてもじゃないが言えない。
資料に目を落とし小さく息を漏らすように返事をした。
「はい……わかりました」
この企画を請け負ったからって私がギャルだったことがバレるわけではない。何も臆することはない。