強面お巡りさんはギャルを愛しすぎている
「もしかして木下ちゃん、羽鳥さんのこと……好きとか?」
なーんて、先程までの木下ちゃんが羽鳥さんにムキになる感じが、好きな人だからツンケンした態度をとってしまう中学生のように見えた。
でもまさかね……もういい大人なんだし。そんなアプローチの仕方しないはず。
空笑いしながらたまごサンドを皿に置き、アイスレモンティーのグラスを掴むと向かいに座りBLTサンドを咥えたまま木下ちゃんが頬を染めていた。
「え、うそ?! 当たっちゃった!?」
「…………」
「そっかそっか、そうだったんね。……そりゃ嫌だよね。好きな人が他の人を見てるのは」
好きな人の眼中に入っていない苦しい気持ちは私にもよくわかる。特に相手がこちらの気持ちに気付いていない一方的な片思いだと余計に一人モヤモヤする。それで空回りしてどうしてもその人の前では素直になれなくなる。
「先輩はいいなぁ……。羽鳥さんから好かれて」
「いや、好かれるというより。あれは崇めてるに近くない!?」
「崇められるのでもいいです。羽鳥さんの目に私は全然映ってないですもん……」
「そんなことないって! この前制服着た時も羽鳥さん褒めてたじゃん!」
「あれは小鳥遊先輩のおまけみたいなもんですから……。制服着たらちょっとは気にかけてくれるようになるかなって思ったんですけど、あまり効果はなかったです」
木下ちゃんは俯きながら黙々とサンドウィッチをたいらげた。
もしかして恋敵? の私とここでこうして食事をするもの本当は嫌だったのではないだろうか。だとしたら私相当空気の読めない奴だ。
グラスを掴む指先が尋常じゃないほど湿って手から落ちそうになる。きっと結露の水滴だけでなく手汗も混ざっているのだろう。