強面お巡りさんはギャルを愛しすぎている
「それじゃ、朝礼を終わります。みんな〜仕事に戻って〜」
「俺たちのマドンナが……」と好意があった人達からいつまでも悲壮感漂う視線が送られてくる。悪い気はしないが私はもう人妻。誰がなんと言おうと幸せな人妻。
視線を無視し、自席に着くと隣に座る後輩の木下ちゃんが声を掛けてきた。
「たかは……じゃなかった、小鳥遊先輩ご結婚おめでとうございます!」
「ありがとう。無理して新姓で呼ばなくてもいいよ。会社では旧姓のまま仕事しようと思ってるから」
「そうなんですか? でもよかったです。先輩が会社辞めなくて。先輩がいなくなっちゃったらうちの会社潰れちゃいますよ〜」
「そんな大袈裟な」
「いやいや、本当ですって! 男性陣の士気にも関わりますから」
木下ちゃんがチラリと別の島へ目線を移すと、男性陣がいまだにこちらを見ていた。送られてくる視線に居心地悪さを感じながらもノートパソコンを立ち上げる。
木下ちゃんは毛先にパーマをかけているボブカットを揺らしながら興奮気味に話し続けた。
「先輩お付き合いしている人がいるなんて知りませんでした! 恋愛話は全然話してくれないですし……で、で! お相手はどんな方なんですか?」
「えへへ黙っててごめんね。相手は警察官なんだ」
「わぁー!! お堅いお仕事に就かれている方なんですね! でもお似合いだと思います。先輩みたいに才色兼備な美人とお堅い真面目な警察官……なんだかキュンキュンしちゃいますッ!!」
「え、あ、そうかな?」
勝手に色々妄想しているようで木下ちゃんは自分の肩を抱きながら「キャー!」黄色い声を出し悶えていた。おそらく、最近流行っているイケメン俳優が出演している刑事ものの恋愛ドラマでも観ているのだろう。