強面お巡りさんはギャルを愛しすぎている
 そこには、ガングロ時代の制服にルーズソックス、おまけに読モをしていたギャル雑誌の表紙を飾っていたバックナンバーが数冊入っていた。堂々と表紙にいる自分が気持ち悪い。
 さらに中身を掘り返すもお願いしていた中学生時代までの写真は一切入っていなかった。
 急いで姉に電話を掛けると数コールで応答があった。

「ん〜~もッしもぉし〜」
「ちょっとお姉ちゃんッ!! 頼んでた物と違う物が届いたんだけど!!」

 今日も飲んだくれているのか、少し酔っ払い気味の姉がケラケラと笑い始めた。

「なにを言うか〜! その品物はあんたの人生そのものでしょうがぁ〜! 式で飾りなさいよぉ〜」
「馬鹿なこと言わないでくれる?! 私は、生まれてから中学生の時までの写真ってお願いしたよね!!」
「いや~、あたしもさぁ~驚いたよ? ”やってみたいことにチャレンジしろ”なんて言ったけどさ、あんたがまさかガングロになるとは思わなかったよ」
「だから私はこの黒歴史をなかったことにしたいんだってばッ!」
「いいじゃない別に~若気の至りよ! それに制服捨てないで取って置いてるってことは大事な思い出でしょ〜?」
「それは……んー、まぁそうだけど……」
「ならいいじゃん! ってかあんたまだ修一郎くんにガングロだったの黙ってたの? すぐにバレるわよ〜」
「うるさいなぁ……私は絶対にこの秘密は守り抜くの!! お姉ちゃんもこのことはぜッッたいに修一郎さんには言わないでよね!! 絶対よ!!」

 怒鳴って通話終了ボタンをタップし、急いで段ボールを抱えて寝室に向かった。

「こんな爆弾が我が家にあったらまずいでしょ〜〜!!」

 ウォークインクローゼットを開け、クリーニング済みのカバーが掛かっているロングコートの奥に段ボールを投げ込んだ。他にも段ボールがあるし、ぱっと見ここなら気付かれないだろう。それに修一郎さんはあまりここは開けない。だから安全……のはず。

 ウォークインクローゼットの扉を閉める際、当時の記憶が蘇ってきた。

 苦しくて忘れちゃいけない大事な思い出が。


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