強面お巡りさんはギャルを愛しすぎている
無事に会計を済ませ、商品が入った不透明な袋を抱えながら家路を急いだ。
梅雨のもわっとした嫌な空気が肌を掠める。別に万引きしたわけでもないのに何故か心臓がバクバクして、いけないことをした気持ちになっていた。
家に着くなり自室の勉強机に座り乱れに乱れた息を整える。大きく深呼吸をしてレジ袋を逆さにし、買ってきた化粧品を机に出した。
「私はこれから違う私になるんだ」
口に出したら、本当に変われる気がした。
鏡を取り出し勉強机の電気を点け、先程の雑誌のメイク講座ページを見ながら真似をするように施した。
「できた……」
鏡に映ったのは、首元と顔の色がミスマッチな薄い日焼けをしたような顔。バサバサのつけまつ毛に目元は太めのアイラインで囲み、猫目のように目尻ラインを吊り上げた。その後、白色のアイペンシルで目頭にワンポイントを入れ、唇も白の口紅で塗りたくった。自分で言うのも変だが、お化けのような顔だった。
「ぷは……あははは」
思わず腹を抱えて笑った。自分の見慣れた顔のはずなのに原型を留めていなさとなんだか不潔感が出ておかしかった。
少し笑うと目尻に涙が溜まり、アイラインが滲んだ。
「あー、よれてる。ここのメーカーはダメだな。こっちに載ってるデパコスとか買ってみようかなー」
雑誌を捲り、私は研究をした。わりとやると決めたらトコトン突き詰めるタイプだ。
「首元にファンデを付けたら服が汚れるからやっぱり日サロで焼くしかないのかな?」
巻末に載っていた日サロの広告が目に入った。間髪入れず私は携帯を握り、番号を入力していた。
「あのっ……今日って空いてますか?」
何度も何度も日サロンに通い徐々に肌を黒くした。学校では日焼けしたと嘘を吐き、全身焼きながらギャルメイクやヘアスタイルを研究し続けた。新しい自分になれるのかと思ったらワクワクが止まらなかった。