強面お巡りさんはギャルを愛しすぎている
修一郎さんとは一年ほど交際していたので、もちろんそういうことはしているがまだ少し慣れていない。どうしても大好きな人にあられもない姿を見られていると思うと羞恥心が生まれてしまう。逆もまた然りだ。修一郎さんの鍛えられた筋肉は目の保養でもあり、ある意味毒でもある。
エレベーターの操作板上部にはエレベーター内のカメラの映像が映るようになっていて、見上げると私の顔は真っ赤だった。
五階に着くと足早にエレベーターから一番近い角部屋の前に立つ。大きく深呼吸をし、部屋の前の”小鳥遊”と書かれた表札をじっと眺めた。
「私、ようやく小鳥遊になれたのね」
ほくそ笑みながら鞄からキーケースを取り出し、鍵を開けた。
「ただいまーって言ってもまだ修一郎さんは帰ってないか」
帰ってすぐに寝室に向かい、コートもそのまま鞄を投げ捨てベッドに倒れこんだ。
一緒に寝ているキングサイズのベッドは忙しい修一郎さんのために最高の睡眠を提供すべく、高級寝具店で何度も寝心地を確認して買ったお気に入り。
自分の枕ではなく修一郎さんの枕を手に取り、抱き枕の様に抱きしめながら顔を押し付けた。
「あああ~~、修一郎さんの匂いがする! やばい! すき!」
思いっ切り鼻から息を吸い込み、彼の匂いが鼻腔をくすぐる。彼の枕を抱きしめながらベッドで"きゃ〜〜"と奇声を上げのたうち回っているとスマホが鳴った。
「チッ……誰よ」
幸せな時間を邪魔され舌打ちをし、着ていたトレンチコートからスマホを取り出し画面を見ると通信チャットアプリに未読が付いていた。アプリを開くとチャットの送り主は修一郎さんからだった。
”今から帰ります”
「ほおぁ!? やばい、帰ってきちゃうッ!」
急いで起き上がり、枕を元の位置に戻し乱れた掛布団の皺を伸ばした。痕跡は絶対に残さない。
コートを脱ぎ、エプロンを付け、長い髪をバレッタで一つに纏めた。広めのカウンターキッチンに入ると気合を入れて夕飯の支度を始めた。