強面お巡りさんはギャルを愛しすぎている

 涙が引いた頃にはまた渋谷駅に戻ってきていた。涙が止まった代わりに私の中に別の感情が生まれた。

 もう一度渋谷駅に降り立ち、私は決心した。


「サークルを解散します」

 私はギャルサーに所属するみんなに解散を告げた。そしてギャルを辞め、雑誌からも姿を消した。

 小鳥遊さんの好みの女性になって友達ではなく、恋人になってやる。彼の横に立っても恥ずかしくないようになるんだ。

 (絶対に振り向かせてみせる!)

 私は一度やると決めたらトコトン突き詰めるタイプ。この日から清楚系美人の研究を始めた。

 まずは美人の定義を調べると才色兼備が当然らしい。
 元々勉強は嫌いではなかったので猛勉強の末、大学へ入学した。

 メイク道具は一掃し、ナチュラルメイクを目指した。日サロで焼いていた肌は白く戻すのにだいぶ時間とお金がかかったが元通りになった。

 それから六年が経ち、彼を探しに渋谷の交番に行くも、もう彼はいなかった。警官であることを誇っていた彼が辞めるはずがない。またここで会えると信じて私は渋谷に通いつめた。

 そして小鳥遊さんと運命的な再開を果たした。

 彼は私があの時のガングロギャルだとは気付いていないようだった。名前も明かしてなかったし、顔も見違えるほど変わった。言葉遣いも直して清楚な空気を醸し出した。

 彼は新しい私と恋に落ち、付き合い始めて一年でプロポーズをしてくれた。


 黙っているのは心苦しかったが、ようやく掴み取った彼からの愛を失いたくなかった。
 だから私はギャルだった秘密を隠し通さなければいけない。

< 72 / 96 >

この作品をシェア

pagetop