強面お巡りさんはギャルを愛しすぎている
「本当にモデルだったのか」
見開きページで見出しに”なつ©︎の着回しコーデ”と書かれ彼女が載っていた。
「なつ……それがお前の名前だったのか」
しかしその号を境に彼女は雑誌に載ることはなかった。
どうしてだろうか。姿を消した彼女が物凄く気になる。
俺はバックナンバーを出版社から取り寄せ、彼女が載っているページを読んだ。雑誌の中の彼女はどれも笑っているが、なんとなく翳った笑顔をしている気がした。
(今、彼女は元気だろうか。一人で泣いていないだろうか)
次、彼女が家にやって来た時に甘いカフェオレを淹れてやろうと思って買った黄色のマグカップ。そっと手に取ると胸がチクチクと痛み苦しくなった。
「なんでこんな気持ちになるんだ……」
彼女のことを考えれば考える度に胸の痛さは増していき、マグカップを見る度に怒ったり笑ったりする彼女の顔が浮かんだ。
それから俺は彼女と会えないまま渋谷での研修が終わった。本来の内勤に戻ってからも彼女がもしかしたらここに戻ってくるかもしれないと、同じマンションに住み続け、仕事終わりに渋谷の繁華街を一周歩くのが日課となった。